活動報告 REPORTS

活動報告

令和6年度 第9回通常総会:総会及び講演会

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2024年6月8日、NOWAC第9期通常総会を開催しました。
(総会出席19名、地域の未来を考える会議inかづの2024 45名出席)

議事は3報告2議案で粛々と進行し、つつがなく終了致しました。
会員の皆さまからの心強いお力添えに、改めて心より感謝申し上げます。

通常総会後、地域の未来を考える会議inかづの2024を開催

通常総会の後、再生可能エネルギーの重要性と地域の未来を自分たちで考えることの大切さを、3名の講師の方々による講演を通じて、大人と子どもが共に学び、共に考える機会とする「地域の未来を考える会議inかづの2024」を、鹿角市後援、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社秋田支店特別協賛にて開催いたしました。

まずはじめに、山形県遊佐町で少年議員を5期、うち少年町長を3期務められた齋藤愛彩氏に、「当事者から見た遊佐町少年議会による若者の社会参画」と題し、ご講演いただきました。

子どもたちの自主性や、地域の一員としての活動を実現するためには、大人の携わり方が非常に重要で、まちづくりの一員としてきちんと扱い、「任せる」こと。
そういった体験を通じて、自分たちも町を変えられるんだという体験が大切であると、自身の経験から語っていただきました。

続いて、元・吉野ヶ里町長、松隈地域づくり株式会社 代表取締役 多良正裕氏に、「地域の恵みを未来の力へ」〜小水力発電で一歩先行く地域づくり〜 と題し、ご講演いただきました。

地域が自立していくために小水力発電事業は有効で、小水力発電事業を有効化するためには、事前調査事業に対して行政が支援を行うことが大切であり、行政が投下した資本は税で戻ってくるので、行政にとってはコストではなく投資であるとお話をいただきました。

松隈での成功事例をもとに、その体現者である多良様からの言葉には重みがあり、大きな収益を求めず、佐賀モデルのサイズ感を踏襲して事業を進めていくことに、エネルギーを有効活用して地域の未来をつくっていく1つの方法を見たような気がします。

少しずつでも小水力事業を取り巻く環境が良化していくように、当協議会も引き続きさまざまな情報発信や提言をしてまいります。

最後に株式会社リバー・ヴィレッジ 代表取締役 村川友美氏に、「子ども水力発電所、始めます。」と題し、ご講演いただきました。

地域をまとめる作業をお手伝いし、さまざまな小水力発電を形にしてきた村川様が、その体験を通じて感じた限界、これからの地域資源の活用・開発の仕方についての1つの考え方をお話くださいました。

「こども水力発電所」という新しいパートナーシップの形を通して、もっと自然と寄り添う形での自然エネルギー創出と利用を、みんなで試行錯誤しながら目指していくことで、見えてくる新しい社会があるのではないかと考えさせられました。

些細なことで批判をされるリスクがつきまとい、何も喋らないことが安全となった現代においては、コミニュケーション不全が起こっているのではないかと思います。
皆が協力しなければ実現しない小水力発電の本質と現実には難しさはあれど、小水力開発は、閉塞感を多分に感じる現代において、コミュニケーション不全を解消する「薬」になりうるのではと感じました。

おまけの話ではJet水車をご紹介いただきました。
まだ構想段階ではありますが、このJet水車を活用して、地域での学び、つながりをつくるイベントをリバー・ヴィレッジ様とNOWACで開催出来ればと考えており、この「地域の未来を考える会議inかづの2024」のその後をしっかり繋いでいきたいと思います。

地域の未来を考えるとは??

お三方の講演には、「主体性」という共通のキーワードがありました。

地域のことは自ら考え、声を出し、行動を起こさなければ何も変わらない。待っているだけでは、衰退の道をたどるだけ。百年前に将来を想い、行動を起こした先人に倣いその精神を次世代につないでいく。

多良様がお話くださったこの言葉と、「主体性」という共通のキーワードに、「地域の未来を考えるとはどういうことか」が表されているかと思います。

素晴らしい講師の方々、会員の皆さま、理事・運営委員・事務局スタッフの皆さま、 エスポワールかづのスタッフの皆さまのおかげをもちまして、第9回総会、その後のイベントも盛況のうちに幕を閉じることが出来ました。ありがとうございました。

2日目:小水力発電候補地と小岩井農場の視察

2日目は小坂町砂子沢の小水力発電候補地視察と小岩井農場の視察を行いました。

砂子沢の小水力発電候補地では、事業主体となる土地改良区の方々、役場の職員の方とともに、講師の多良様、村川様に現地でアドバイスをいただきながら、今後の事業についての話をすることが出来ました。
事業化に向けた動きの中で、良い学びの場ができ、小水力事業で得たお金の生きた使い道が検討され、さまざまな繋がりができること、そして何より、地域にとってより良い未来につながる事業になればと思いました。

その後移動し、野澤理事のアテンドで小岩井農場の視察を行いました。
まずは昼食を山麓館レストランでいただきました。
小岩井農場の美味しいお肉や野菜、牛乳など、皆さんお腹いっぱいいただきました。

食事を終えると、歩いて上丸(かみまる)牛舎の見学に向かい、まずは国指定重要文化財の1号牛舎を見学しました。

昭和9年に建築された木造二階建ての牛舎は今も現役で使われており、開口部が大きく風通しが良いからか、熱がこもっておらず、思ったよりもにおいも強くありませんでした。
暑さに弱い牛にとっても、商品となるミルクにとっても、良い環境がつくられていました。当時の最新鋭のスタンチョン式(鉄パイプで牛の首をはさんでつなぐ方法)を取り入れた搾乳牛舎は、小岩井農場の開拓の志を今に伝える建物でした。

続いて、明治時代に作られた国指定重要文化財のサイロを遠目に眺めながら移動し、小岩井農場資料館を見学しました。ここでは小岩井農場の歩みがパネルや実物展示で分かりやすく解説されています。当時の暮らしぶりや宮沢賢治との関わり、競走馬生産など、酪農や農業以外の情報もあり楽しめました。

最後に「株式会社バイオマスパワーしずくいし」様の施設を見学しました。

家畜排泄物と食品残渣を処理して得られるメタンガスを利用した発電と、家畜排泄物と食品残渣の堆肥化を行う施設で、資源・エネルギーの循環利用を行うことで、地球温暖化防止、循環型社会の形成、農林漁業・農村漁村の活性化に貢献し、環境保全型農業を支援するものです。
環境をしっかり保全しながら1次産業の活性化に資する、大変素晴らしい取り組みでした。

2日目視察を終えて

小岩井農場での視察を終え、先人の思いや行動を知り、今の自分は先人のように未来を生きる人たちのために考え、行動しているのかと問えば、 恥ずかしながら何もしていないに等しいと思わざるを得ませんでした。

小岩井農場の広大な森林は、防風林としての役割もありますが、小岩井農場創業者の一人であり、日本の鉄道の父と言われる井上勝の

「農場を拓くことによって、鉄道敷設で日本の美しく良質な田畑を潰してきたことの埋め合わせができないだろうか」

という想いがしっかり受け継がれている証左なのだと思います。

豊かに暮らすために、壊しているものがある。
そこにしっかりと目を向けて、埋め合わせをしていかなければ、いずれ破綻してしまう。

木を切ったら同じだけの植樹を行う。
環境に負荷をかける事業はしない。

小岩井農場の事業の根幹には こういった「循環」という考え方があり、このようなしっかりした軸があるからこそ、130年以上持続しているのだと思いました。

そうであるならば、小水力発電事業の収益をどのように活用するのかを考えるとき、
「その使い方は“循環”につながるのか」と問うことが、地域の持続性につながるのではと思いました。

終わりに

今を生きる我々は、100年先の未来を生きる人たちのために、もっと身近なところでは、子や孫のために何か行動を起こしているでしょうか。
もし、この問いに答えられないのであれば、今こそ自ら考え、声を出し、行動を起こす時ではないでしょうか。

大人も子どもも変わらなければなりません。
「大人が悪い」と敵視し、「今の子どもはダメだ」と批判し、世代間で対立することに何か意味はあるのでしょうか。意味がないのであれば、私たちはどう変わっていくべきでしょうか。
そんなことを考えることが、未来を考える大きな一歩になるのではないかと思います。

末筆ですが、今後とも、当協議会では講演会や視察、セミナー、シンポジウムなどを通じて、会員や地域の方々とエネルギーや地域のことについて考え、研究、実践していきたいと思います。

本年も北東北小水力利用推進協議会(NOWAC)の活動へのご指導ご鞭撻、お力添えをお願い申し上げます。

NOWACの会員になりませんか??

当協議会は、持続可能な地域づくりと環境保全に寄与する活動を目的に設立されました。
古くから北東北に身近にあり豊富にある”水”を地域エネルギーとして、地域の人々によって事業化・管理・利活用していく取り組みや、地域が主体的に地域エネルギーや環境について考える「場」となっています。

私たちは視察や講演会、シンポジウム、勉強会、イベント開催などの活動を通じて学び、仲間づくりを行い、持続可能な地域づくりや環境のあり方、自然を活かした未来に繋がる社会エネルギーシステムの構築に向けて、より有意義な活動を目指している途上です。

地域の未来、ここに暮らす子どもたちの未来を真剣に考えている方、未来を担う当事者である若者や子どもたち、地域・環境・次世代のために何か貢献できることはないかと考えている方など、何らかの想いがある皆さまのご参加とお力添えをお待ちしております。