活動報告 REPORTS

活動報告

令和5年度 第1回例会:視察および勉強会

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2023年8月25日開催の第1回例会では、再エネ普及と地域づくりを同時に行うことに取り組んでいる「株式会社グリーンパワーインベストメント(以下、GPI)」様の案内にて、建設中の風力発電所「グリーンパワー深浦風力発電事業」と、稼働中の「ウィンドファームつがる」での視察・勉強会を行いました。ご参加の皆さまお疲れさまでした。

建設中の「グリーンパワー深浦風力発電事業」の視察・勉強会では、まずはじめにGPI担当者様による会社概要説明と、「グリーンパワー深浦風力発電事業」の概要についてご説明をいただきました。

設備容量は79,800kW(4,200kW × 19基)、系統連系容量73,600kWで、2024年2月の商業運転開始を目指し、現在建設が進んでいます。
送電線は系統連系点である北津軽変電所までの約45kmを、道路に沿って埋設をほぼ完了しており、風車も2023年5月より津軽港から各サイトに順次輸送され、工事は順調に進捗しているとのことでした。

続いて、深浦町役場の担当者様による当該事業を通じた地域振興策についてご説明をいただきました。

GPI担当者様による会社概要説明と、「グリーンパワー深浦風力発電事業」の概要についてご説明

深浦町には、風車設置に伴う固定資産税収入の他、地域づくりに活用する資金として売電収入の一部が20年にわたり還元される予定です。
資金を活用して地域振興に結びつける手法についても、知識や各地の事例に詳しいGPI所属の専属のスタッフが、地域の各主体と協働して取り組む仕組みとなっていました。
その他、地元採用の推進、風車建設サイトへのアクセス道路は、工事完了後、地域振興策として進める林業での活用を目指すなど、さまざまな視点からの地域振興を検討されています。

座学を終え、建設現場の視察を行いました。

建設現場の視察

「グリーンパワー深浦風力発電事業」の風車は、「ウインドリフト」工法で組み立てられていました。
従来、大型の風車の建設には超大型クレーンが必要で、この超大型クレーンは国内に数台しかないため、調達や輸送・設置の難易度が高いものでした。
「ウインドリフト」工法は、タワー周囲に設置した架台をリフトアップして組み立てる工法で、超大型クレーンの設置場所確保が不要となり、施工ヤードの最小化による建設コストの削減がが見込まれます。また、10tトラックで運搬出来るため、輸送・設置が大掛かりになる超大型クレーンに比べ、幅広い施工条件に対応可能となっています。

昼食と移動を挟み、午後からは稼働中の「ウィンドファームつがる」の視察・勉強会を行いました。

事業概要についてご説明

「ウィンドファームつがる」の視察・勉強会では、まずはじめに事業概要についてご説明をいただきました。

発電容量は121,600kW(3,200kW × 38基)、約9万世帯分の電気を生み出す日本最大規模の風力発電所で、2020年4月より商業運転を開始し、電力は全量を東北電力へ供給しています。

「ウィンドファームつがる」の視察

また、事業化前から足繁く つがる市に通い、再エネの必要性を説き、農山漁村再生可能エネルギー法の成立により事業化が進んだとの事でした。 商業運転開始より現在に至る3年強の間で大きなトラブルや苦情もなく、農業活性化と地域振興に向けた取り組みも進展しているとの事でした。

続いて、場所をつがる市の「旧制木造中学校講堂」へと移し、つがる市農林水産課担当者様より、GPI様と市との協定、市側のメリット、農山漁村活性化事業基金の活用、GPI様と市による地域課題解決事例についてご説明いただきました。

GPI様と市との協定、市側のメリット、農山漁村活性化事業基金の活用、GPI様と市による地域課題解決事例についてご説明

つがる市の場合、農山漁村活性化事業基金は農業分野に活用されており、農業のICT化に向けた通信基地局整備費用負担やスマート農業機械購入への補助金事業、収穫期の短い特産品メロンの通年栽培を目指すメロン水耕栽培化事業など、農業の活性化・地域振興への投資が計画的に行われていました。

最後に、農山漁村活性化事業基金を活用したメロンの水耕栽培実証実験の現場を見学しました。

GPI様と市との協定、市側のメリット、農山漁村活性化事業基金の活用、GPI様と市による地域課題解決事例についてご説明

ビニールハウスと温泉熱を活用し、土を使わないことで病気や虫の発生を抑制したメロンの水耕栽培は、一年を通して安定した環境での栽培を可能とし、こういった新しい魅力ある農業の事業化が実現すれば、農業活性化や地域振興に貢献すると期待されています。

今回の視察・勉強会を通じて、地域の資源を使って事業者が利益を上げている以上、地域と深く関わり、対話し、その利益の一部を必要十分な形で地域に還元することの重要性を再認識すると共に、地域に暮らす市民も、自分が暮らす地域にどのような問題があるのかをしっかり学び、自分たちの子や孫の世代が暮らす未来の地域のありようをどのように考え、その実現のために、今、自分たちに何が出来るのか、しっかりと考えて行動しなければならないと感じました。

各地域では、地域の資産が域外に流出し地元に残らないこと、そして何より、その事実を多くの地域の方々が知らないことが問題となっており、GPI様の取り組みはその問題解決の第一歩として評価出来る取り組みかと思います。しかしながら、地域の目線で見れば、こういった取り組みを行なっていない地域外事業者も多く、地域への還元総量は まだまだ十分であるとは言えない部分もあり、事業者による地域でのエネルギー開発競争ではなく、地域振興のための支援競争になっていき、事業者にとっても地域にとっても、より双方にバランス良く恩恵のある再エネ事業となっていくことを切に願うところです。

結びになりますが、今回視察にあたり、さまざまにご協力・ご支援いただきましたGPI各担当者の皆さま、深浦町、つがる市の担当者の皆さまに、心より御礼申し上げます。